星屑ビーナス





『…もう、やだ…つらい…つらいよ』

『…知香、』





つらい、苦しい。

そう泣く知香に、気付いたら一緒に泣いていた。





『…なんで、かおりも泣いてるの…?』

『…あんたが、泣くから』

『…っ…』





知香を裏切ったバカ男、何も出来ない無力な自分。どちらも悔しくて、涙が止まらなかった。

二人で一晩中泣いて泣いて、次の日は二人とも泣き腫らしたひどい顔で出勤して、周囲に驚かれたのも今となってはいい思い出。





『…ひどい顔』

『かおりもね』

『……』

『…ありがとう』

『…?』

『何か、すっきりした。かおりが一緒に泣いてくれたからかな』





そう次にはもう知香は笑っていて、それ以来前にも増して仕事に打ち込むようになっていった。

そのうちリーダーになって真崎さんと競うようにもなって、恋には臆病になって落ち込むことが多かったけれど、仕事を生き甲斐にしていけているならそれでいいんじゃないかとも思った。





「私は、知香が前の男のせいで笑っていたのも見ていたけどそれ以上に傷付いてボロボロになったのも見ていたから…また傷つくくらいなら新しい恋なんていらないんじゃないかって思ってたんです」

「…うん」

「だから、知香が真崎さんのことを好きかもしれないって気付いた時本当は少し怖かった」



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