星屑ビーナス



嬉しい気持ちも当然あった。一度は止まったその足が、また歩き出そうとしているのだから。

だけどまた傷つくんじゃないか、泣いてしまうんじゃないか。そう、想像しては守ろうとしてしまう気持ち。





「けど、そうじゃないのよね」





逃げるより避けるより、向き合うべきものがある。

それは、知香自身の心が乗り越えるべきもの。それに必要なのは、守る私の手じゃない。





「…だからこそ和泉さんは、少しきついくらいの言い方でずっと奥谷さんの背中を押してたんだよね」

「……」

「わかってるよ、ちゃんと」



隣を見れば、ハンドルを動かしながら前を見つめる浅田さんの優しい眼差しがある。

あの男によく似た雰囲気の彼。だけどその声は、するりと心に入り込み本音を引き出してしまう。




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