星屑ビーナス



「…だからこそ、気に入らないんです。真崎さんのことが」





気に入らない。

心に触れて、泣かせて、優しく包んで、私には出来ないことを平気でしてみせる彼が、悔しくて羨ましくて、気に入らない。





「まぁ、何もしてあげられなかった私には口出す資格なんてないですけど」

「そうかな。和泉さんは悠とはまた違う形で彼女を幸せにしてると思うけど」

「…?」



するとその言葉とともに、目の前にスッと差し出されたのはピンク色の封筒。



「?これは…?」

「本当は帰りに渡しておいてほしいって言われたんだけどね、奥谷さんから」

「……」



封筒に書かれた『かおりへ』の文字。それは見慣れた知香の字で、この手紙が知香からのものなのだと知る。

それを手に取り、そっと中の便箋を開いた。


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