星屑ビーナス



読み終えた頃には赤信号で停車する車内はクーラーですっかり冷え切っており、肌寒いくらいのその温度に彼の指先がクーラーを弱める。



「…恥ずかしい手紙」

「奥谷さんらしい、真っ直ぐな手紙じゃない」

「…それもそうですね」





私の幸せ?そんなものいいのよ。

だって、知香といて毎日幸せだもの。

だから知香には、もっともっと幸せになってもらわなきゃ。





「…幸せになって、か」





バカな子。彼氏も好きな人もいない人間に、プレッシャーかけてるんじゃないわよ。



(…私の、番)

結婚なんて、しようと思えばいつでも出来る。親の紹介や知人、相手ならそこらへんにいる。

だけど知香を見ていたら、私もちゃんと好きな人と向かい合って、想い合って、結婚を選びたいと思えた。

知香みたいに好きな人を想って、笑って、泣いて、怒って、誰かを照らす存在になりたい。




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