星屑ビーナス



「…まずは、今日の知香の幸せを見届けなきゃ」



呟いた瞬間、瞳からはポロッとこぼれ出した一粒の涙。



「…まだ式の前なのに泣いたりして、本番になったらどうなることやら」

「…、うるさい…ほっといてください」





止まれ、止まれ、そう思うのに涙はとめどなく溢れ出す。

悲しい?寂しい?…ううん、嬉しい。知香が幸せになること、知香が幸せを願ってくれること。





『本当にありがとう』





その言葉に、心に込み上げるあたたかさを感じる度こぼれる涙。その優しい指先は、それをそっと拭う。



「和泉さんも、泣くんだね」

「…浅田さんって何気に失礼ですよね」

「あはは、ごめんね。可愛くてつい」

「……」



涙でにじむ視界で、彼はそっと微笑む。


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