星屑ビーナス
「…ありがとう、ございます」
「いいよ。コーヒー1本な」
「って有料!?」
「当然だ。人生何事もタダでしてもらえるほど甘くない…って言いたいところだけど」
「?」
「気にしないでいい。今回はただの俺の自己満足だしな」
「自己満足…?」
呟き浮かべられるのは、いつもの意地悪でも先程の自信に満ちたものとも違う、優しい笑顔。
「いつも無駄に強気なお前が『可愛い』には否定的だったから、気になっただけだよ」
「……」
人が見ても、『可愛い』ことに気が引けている自分
それはきっと
段々と薄れていく自信
「ま、これで少しは前向きになれるだろ。特別実演終了。あがっていいぞ」
「…ありがとう、ございました」
笑顔のまま片付けを始める彼に、私は椅子から立ち上がり会議室のドアへと向かい歩き出す。
「…あの、真崎さん」
「?」
「うちの会社から一番近い店舗って、どこでしたっけ」
「一番近い…のは新宿店だな。駅前のデパートの一階化粧品売り場」
「…わかりました。お先に失礼します」
そして挨拶もそこそこに、急ぎ足で支度をして会社を出た。