星屑ビーナス





可愛いものは好き。興味だって、ある。





『知香は可愛いより格好良いだよね』





だけどいつも周りに言われたのはその言葉で、そうするうちにいつの間にかこんな自分が『可愛い』を言葉にしたり意識したりするのが恥ずかしくなっていた。

それは二年前のあの日以来余計に拍車を掛けて、元彼に可愛くないと言われるような女だし、って変な諦めをしていた。



けどどうしてか、その言葉が嬉しい





『お前にはお前の良さがある』





彼のその言葉が、嬉しい

(…認めたくはないけれど)



悔しくて嬉しくて、複雑な気持ちの帰り道。閉店までに、と急いで来たデパートの化粧品売り場で自社商品を買った。

チーク、ペンシルタイプのアイライナー、ラメの入ったグロス。…そして、いつもなら見向きもしないピンクブラウンのアイシャドー。



そのままのその足で、向かったのは行きつけの美容室。



「いらっしゃいませー」

「すみません、予約はしてないんですけど…」

「大丈夫ですよ。カットのみですか?」

「はい…前髪だけ、」





あの人の言葉のまま踊らされている気もする。

けれど、それでもいい

自分の可能性と向き合うために






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