恋の相手はお隣さん。



「響……なんか疲れてる?」

その日の夜。持ってきたおすそ分けを食べ終えて、マルボロを吹かしていた響は、いつも以上に口数が少なかった。それに、表情もほとんど変わらない。知らない人が見たら、不機嫌だと勘違いしそうなほどだ。

「……どうして、そう思う?」
「え? だって……わかるよ。きっと、響よりも、響のこと見てるよ? 私」

些細な変化も見逃さないくらいに、ずっと響を見てるから。それだけは自信ある。

「だから……今日のお駄賃は、いいや」

さすがに私だって、疲れている響に無邪気に迫るような真似はしない。いくら子供扱いされても、それくらい弁えられる。

「――珍しいな」

口元だけで笑った響は、私の髪に触れて毛先を掬った。それだけでも、心臓がギュっと掴まれるように苦しい。私の反応をわかってしてるなら、響ってすごく悪い男だ。

「私だって、遠慮くらいするよ」

思わずそっぽを向くと、響は指を顎にかけて私の視線を奪った。響の目に映った私は、自分でも笑っちゃうくらいに動揺してる。なんでもないことみたいに、私の意識を攫わないで欲しい。

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