恋の相手はお隣さん。
紫煙と涙の向こうに見える響が、すごく遠く感じた。
優しいキスと、ぬくもりだけが、私に許されている響のすべてだ。
それすらもくれないなんて、そんなの耐えられない。
「ひび、き……っ」
力いっぱいに響の胸に飛び込むと、そのまま崩れるように押し倒した。
ガタン、と大きな音を立てて倒れた拍子に、響の指から煙草が離れて床に転がる。
「紗英っ……危ないだろ」
馬乗りの格好で、初めて響を上から見下ろした。だけど、どれだけ近くで見たところで、僅かな驚きが見えるだけ。何を考えているのか表情から窺い知れるほど、私は大人になれていない。
だけど、これだけは言える。
「響……私、響が……好きだから。だからお駄賃のキスじゃ、嫌なの……!」
義務じゃなくても、口実がなくても、響の傍にいる権利が欲しい。言葉にすれば単純で、簡単なことだった。
伝わらない気持ちが涙となって、一滴、また一滴と響に落ちていく。
軽く息を吐いた響は手を伸ばすと、私の頬に触れて涙を掬った。そして、ふっと表情を緩め、私の腕を引く。