恋の相手はお隣さん。


ドアが開いた瞬間、また来たか……って顔をされるけど気にしない。
だってこの状況は、利用しなきゃ損。響から会いに来てくれることなんて、まずないから。私が会いに行かなきゃ、会えないから。
だから私は、なんだかんだと用事を見つけては、こうして会いにくる。かれこれもう三年続いているんだから、我ながら粘り強いなって思う。

「で、今日はなんの用だ?」
「お母さんがね、これ持って行けって」

響の目の前に、ラップをかけたお皿をつき出す。中身はお母さん特製の肉じゃがだ。

「悪いな、いつも。じゃあ、おばさんによろしく」
「え!? ち、ちょっと待ってよ!」

お皿を渡すと、ドアを閉められそうになり、慌てて爪先だけ玄関に入れる。おすそ分けだけ持ってきて引き下がるなんて、お上品なことをしてられない。

「押し売りみたいだな? 紗英(さえ)」

響は皮肉たっぷりに笑ってから、顎で部屋を指し示した。
入室許可をもらった私は、我が物顔で上がり込むと、リビングにあるソファーに腰を下ろした。そして隣に腰を落ち着けた響に、まとわりつく。


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