恋の相手はお隣さん。
冷たく言い放たれた言葉に、ハッと身が竦んだ。
何かを言おうとして、でも浮かぶのはグチャグチャな感情ばかりで。鈴井さんに対する嫉妬と、不安しかくれない響への不満でいっぱいになっている。
こんな醜い私を見られたくなんてない。
「離して……っ!」
響の手を振りほどこうとしたけれど、離してくれようとしなかった。代わりに、静かな問いかけが投げられる。
「本当に、離していいのか?」
「……」
「ガッカリだな」
「あ……」
――待ってて損はさせないんだろ。俺を、ガッカリさせるなよ?
不意に過ぎったのは、ついさっき響から言われたセリフだった。
「帰るぞ」
手首を掴むと、響は先を歩きだした。
何か言おうとしても、それが許される空気じゃない。重い沈黙の中、謝ることもいい訳することもできずに、ただ黙って手を引かれていた。