恋の相手はお隣さん。
呼吸をするのも躊躇うくらい、近くに響がいる。ほのかに薫るマルボロの匂いに、胸の奥が締め付けられた。
「俺が怖いか? 紗英」
「え……?」
思いがけない問いかけだった。
答えるより先に顎にかけられた手に力が込められて、緊張で身体が強張る。動いたら、響が離れてしまいそうで、目を逸らせずに固まったまま動けない。
響の瞳の中に必死で想いを見つけようとするけれど、見えるのはみっともなく動揺する自分の姿だけだ。
「――まあ、お前が怖がっても、逃がしてやらないけどな」
数分か、それとも数秒だったのか。沈黙を破った響は、顎から頬に手を移動させた。
「さっきのガキに言っておけ」
静かにそう言うと、瞼を伏せて――。
「宣戦布告なんて十年早いってな」
ゆっくりと、口唇を重ねた。
「ん……っ」
壁に背中を預けていなければ、膝から崩れ落ちてしまいそうなくらい、激しく口づけられる。