恋の相手はお隣さん。


『お礼はキスでいいよ?』

すでに日常化していたおすそ分けを持って行った時、冗談めかしてそう言った。
いつでも余裕たっぷりに私をあしらうから、少し困らせてやりたいって思って、軽い気持ちで口にした冗談のつもりだった。
けれど一瞬だけ驚いた顔をした響は、次の瞬間にはもう余裕の表情で。

『運ぶだけのくせに図々しいヤツ……ま、駄賃代わりだ』
『ん……ッ』

私のファーストキスを奪った。
お駄賃なんて、子供扱いみたいで腹が立つけど、キスの誘惑には抗えなかった。
まさか本当にされると思わなかったからビックリして、でもそれよりも嬉しかったの。
それ以来、おすそ分けを持って行くと、響は“お駄賃"って名目でキスしてくれる。
そんな響の態度で、期待しない方がおかしい。
だからお駄賃のキスをもらうようになって少しすると、勢いこんで告白した。

『私、響が好き。だから、私を彼女にして?』

それなのに、響はまるで相手にしてくれなかった。

『お前が大人になったら、考えてやる』

好きだって言うたびに、そう言ってかわされる。キスはしてくれても、恋愛の対象には見てくれない。
私には、キスは特別なことなのに、響には……大人には、なんでもないことなの?



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