【完】イケメン*眼鏡*ランデヴー
何となく聴いたことがあって、印象にあったあの『ざわわ』というフレーズが、私の体を包み込む。



澪ちゃんがフレーズを紡ぐ度に『さとうきび畑』の歌詞の重さが私にのし掛かり、涙腺を強くノックする。



「あの日、鉄の、雨にー撃たれ、父は、死んでいった……夏の陽射しの中で……。」



その、島のカラリと暑い空間に、染み渡る澪ちゃんの歌声。私は涙で湿度を撒き散らす。



「ざわわ、ざわわ、ざわわ。広いさとうきび畑は、ざわわ、ざわわ、ざわわ。風が通り抜けるだけ……。」



今日学んだこと、感じたこと、澪ちゃんが歌う『さとうきび畑』の全てが私の中から溢れ出す分からない感情を昂らせ、涙を押し出す。



「悠莉ぬなだぐゎや、素直でちゅらさんやっさー。泣きちらや猿みたいやしが。」



「グシュッ………最後の一言は超余計。」



それでも止まらない涙を拭う私の肩をそっと抱いた澪ちゃんは、ただただ優しく、その肩をあやすように叩いてくれた。
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