【完】イケメン*眼鏡*ランデヴー
永太の運転するオープンカーに揺られて、芸術ホールへ二度目のドライブ。



「いいですか、この間みたいに終わってすぐの澪には近付かないこと。……最も、今の悠莉は澪を選んだ悠莉ですから、分かってて行くなら助けませんけど。」



「………はい。心得てます。」



この間は感動のあまりに飛び出して行ってしまった私を永太や雅治が助けてくれたけど、今日は違う。



今すぐ気持ちを伝えたいけど、流石にあの『タンホイザー』な澪ちゃんに近付く自信はないから、ちゃんと待とう。



頭に過るのはいつも穏やかで、ゴーイングマイウェイで、けれど人の気持ちに敏感で気遣いの出来る澪ちゃんばかり。



「はーあ、俺って何気に貧乏くじばかりですね。世話する人がまた一人増えてしまった。」



「申し訳ない。何とお礼したらいいのやら。」



私を好きになってくれた永太にこんな風に甘えてしまうのは、本当に申し訳ない。何とも言えない罪悪感でいっぱいになってしまう。



だけど、そんな私に対して永太はふっと息を漏らし、笑い出す。



「俺の大切な幼馴染み、泣かせるようなことしたら、許しませんからね?」



楽しそうに笑ってそう言ってくれる永太には、きっと今後も敵わない。甘ったれてしまうのだろう。



芸術ホールに到着した私達は、もう講演が始まってしまっているその中へ、早足で向かった。
< 222 / 248 >

この作品をシェア

pagetop