それでも、僕は恋をする。
拓矢のもとに戻ると、拓矢は照れくさそうにしながらもなにもなかったかのように、
「おう」
とだけ言った。
「OKしたんだ」
「あ、うん」
さっき二人の様子を窺っていたのに、本人の口から事実を聞くと、やっぱりショックだった。
「好き、だったの?彼女のこと」
おそるおそる尋ねると、
「好き、っていうか。まあ、かわいいしさ。とりあえず付き合ってみよっかなって」
と言って、顔を紅潮させた。
なんだよ、それ。
とりあえずで付き合うなよ。
僕なんて、ずっとそばにいるのに。
そばでお前を見ているのに。
お前の好みだって、癖だって知っているのに。
どれだけ思っても、僕の恋は成就しないっていうのにさ。
「……うらやましいよ」
簡単に思いを伝えられて。
とりあえず、で付き合うことができて。
「お前なんて、選び放題じゃねぇか」
拓矢のその言葉に、苦笑するしかなかった。