それでも、僕は恋をする。
一週間後。
僕は、バスの車窓から空を仰いでいた。
雲一つない、澄みきった青空が広がっていてすがすがしい。
「晴れてよかった」
誰に言うでもなく呟くと、隣りに座っている拓矢が、
「雨だと台無しだからな」
と、窓に顔を近づけて空を見上げた。
拓矢の顔が、僕の顔に息がかかるほどのところにある。体は少し触れている。
鼓動が大きくなっているのがわかって、恥ずかしかった。
こんなところで赤面したら、変に思われる。
僕は、拓矢にばれないようにゆっくりと静かに深呼吸をした。
そんな僕の気持ちなど知らない拓矢は、僕の顔の間近で、
「平日だから空いてるかなぁ」
なんて、のん気なことを言っている。
「空いているといいね」
そう言うのがやっとだった。
遊園地に着くと、拓矢はスリルのある乗り物ばかり乗りたがって、僕を散々振り回すので、
「たまには、こういうのにも乗ろう」
とメリーゴーランドに誘ったら、
「まじかよぉ」
と、とても困惑した表情をしたので、愉快だった。
「学ラン男子が仲良くメリーゴーランドって、どうよ?」
拓矢は、文句を言いながらも、優雅な音楽とともに木馬に揺られている。
「ロマンチックじゃないの」
と言ってやると、
「お前には敵わねぇ」
と言って、大きなため息をついていた。