大嫌いな最愛の彼氏【短編】
「アタシ…本当馬っ鹿だよな……あんな事……言いたかったわけじゃ…ねぇのに……」


ははっ…と力無く笑う愛華。


「嗚呼…何でアタシは何時もこうなんだろ……。本当…最悪だ……」


自分なんて、大嫌いだ。愛華は心の中で呟いた。

本当は…彪河に好きって、伝えたかった。

上手く言葉にならなくても…

彪河を傷つけるより、ずっと増しだった。


「愛華…。後悔してるなら、追い掛けろよ」


鎌樹が真っ直ぐに愛華を見て言った。


「ほっといたら、今と変わりやしないんだよ。『ちゃんと話し合え』。俺の言った意味、ちゃんと解ってんのか?」


そう言って、鎌樹は立ち上がる。愛華の腕を掴み、グイッと引っ張った。

その弾みで、愛華も、勢いよく立ち上がった。


「ほら、行けよ。あいつの事だから…今は家で引きこもり中?」


ニヤッと、形の良い唇の端を上げ、鎌樹は何か企むように妖艶な笑みを浮かべた。


「愛華が責任取って、彪河の機嫌直してこいよ?例えば…」


コソッと愛華に耳打ちをした。

すると愛華は、顔をピンク色に染め、鎌樹を怒鳴り付けた。


「ふざけんなっ!!馬鹿鎌樹!そんな事、出来るわけねぇだろ!?」

「はぁ〜ん。愛華チャンは、そんなにウブだったんですかぁ?」


からかうように、愛華を鼻で笑う鎌樹。


「馬っ鹿、テメェは黙ってろ!!鎌樹に心配される程、柔じゃねぇよ」

「とか言いながら、さっきまで俺に心配掛けさせてたのは、何処のどいつだ?」

「うっせ!!」


鎌樹は勝ち誇ったような顔をしている。

『少しは、見直したと思ったアタシが馬鹿だった』と心の中で嘆いた愛華であった。



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