この運命を奇跡と呼ぶならば。

『桜、帰ろうか。これ以上遅くなったら危ないし。』


あぁ、‘春’だ。春がここにいる。ちゃんとここにいる。あの日、学校からの帰りが少し遅くなって帰りに起きた事は、あの日の事は悪い夢だったんだ。過去へタイムスリップした事も。全部全部悪い夢だったんだ。

『…桜??大丈夫?なんだかボッーとしてたみたいだけど。』


『…ううん。何でもないよ。何でも。』


あの日の悪夢は忘れない。けれど、ただの悪い夢。だってここに春は居るもの。いつもの様にあの優しく、耳に馴染んだ、低い声でいつもの様に穏やかに微笑んでるもの。あの白いベットで沢山の管に繋がれた無表情の春じゃない。ちゃんと私に笑いかけているのに。なのに、この胸にある嫌な予感はなんなの…?


『桜、なんだか俺ら。つけられてない??』


『え…嘘。』


嘘だ。あの日と同じ…?あの日の事は夢じゃ無かったの?いいぇ、夢のはずだわ。けれど、やっぱりこの胸につっかえるこの予感はなんなの…?まさか…!?


『春…春…。急ごう。急いで家に帰ろ…!!!早くッ!』

『どうしたんだい??あぁ、俺が誰かがつけてきてるんじゃないかって言ったから怖いんだろ?大丈夫、大丈夫。』

大丈夫じゃないから言ってるの!そう言いたいのに、恐怖で声が出ない。私はこの先を知っているのに。何があるかも知っているのに。私のせいで春…貴方が————









『うぉぉぉぉぉぉおッ…!!!』







『桜…ッ!!』





突然、刃物を持った男が桜に向かって飛び出す。そして、桜が衝撃が走った瞬間…

桜の目の前で紅い花弁が散る様に舞う。
























『いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!春ーーーーー!!!』



















そして、彼女が目の前で見た光景は、



血を流しながら自分を庇って倒れている最愛の兄と最愛の兄を刺した男。悲鳴を聞きつけた近所の人達の姿。そして、自分を刺すような攻める様な視線だけだった。



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