この運命を奇跡と呼ぶならば。

「おそらく大丈夫ではない。だから、一。急いで平助を運べ、私が総司を連れていく。」


(いそがなきゃ。屯所へ帰ったら、力使わなきゃ…。例え、秘密がバレても。




…私、いつの間にこの人達が大事になったんだろう。)




そんなことを考えるも返事が返ってくる訳もなく、沖田を運ぶ事に集中する事にした。


「総司。大丈夫だから。平助も大丈夫だから。




…一!!総司を運ぶ!平助担いだか?」

「あぁ、下には副長がいる。後で副長に説明しておけ。」



「あぁ。」


‘説明’とは勿論、沖田達の事だ。


土方の元へと着き、二人を運び終えると先程の事を伝えた。



「桜、あいつらに何があった。」


「沖田総司に関しては、怪我はしておりませんが隊務中に吐血。藤堂平助は私の不注意の折、額の針金がずれ、視界が閉ざされた時に額を斬られました。本当に申し訳ありません。副長、彼の怪我は私のせいです。」


桜が土方を副長と呼び、深く頭を下げたのを見て土方はただ怒るでもなく静かに桜を見つめて言った。


「気にするな。平助は生きてんだ。お前のせいじゃねぇよ。」


そしてそっと桜の頭を撫でるとそのまま最後の仕事をしに去っていく。



「ありがとう、ございます…。」



桜はもう一度土方が去っていった方へ深く頭を下げ、小さく呟いた。




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