相容れない二人の恋の行方は

04 謎。パシリは序章に過ぎなかった…

 編入二日目、私に対する周りの生徒の対応が見違えるように変わった。

「吉井さんのお父様と新谷君のお父様がご友人なんですってね! 学生時代の留学先がご一緒だったとか……」
「お父さんが海外に飲食店を多数経営してるんだってね。都心にはビルもいくつか所有しているとか……」
「すごーい!」

 クラスメイトに囲まれ、その真ん中で不自然な笑顔を浮かべながら「えぇ、まぁね……」となんとか答える。でもそれ以上の言葉は出て来なくて、このままでは間が持たないと判断した私は無言で、隣に立つ人物に視線を送る。

「吉井さんは幼少の頃からずっと海外で生活していたんだよ。だから栄華(ここ)へは編入と言う形での入学になったけど、難しい編入試験をクリアするなんてさすがだよ」

 彼が爽やかに言い放つ言葉はすべてが嘘だ。でもクラスメイトは新谷君の言葉を簡単に信じて、目を輝かせて沸き立っている。騙しているわけだし良い気持ちはしないけど、近いうちにこの噂も学院中に広まり、初日のような居心地の悪い視線を四方八方から浴びることはもうなくなるだろう。そう思うとほっとする気持ちの方が勝る。

「吉井さん、昨日案内しきれなかった施設が残っていたよね。今日は時間いいかな?」
「はい……」

 一刻も早くこの場から逃げ出したくて、新谷君について教室をあとにした。

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