相容れない二人の恋の行方は
 外はすっきりとした秋晴れ。日差しも風も心地いい。
 平日の午前中の街は休日の賑やかな雰囲気とは一変して落ち着いている。私はこっちの方が好きだ。
 新谷のケガのこともあってしばらく学院に行くのは控えている。身体は健康そのものだけど、多くの学生の目に留まる学院にあの姿で行くのはよろしくないとの判断は私も理解出来た。簡単な事務作業を自宅で済ませ、新谷はよく現理事長の祖父やその他理事、学院関係者と電話でのやり取りをしているのを見るけど、やっぱりまだ彼からやる気のようなものは感じられない。

 スーパーまでの道中、私は新谷がケガをするきっかけとなった日のことを思いだしていた。
 「真由子のことが好きだからだよ」。
 新谷からの突然の告白には、私は意外と冷静だった。そんなことありえないっていう思いが一番の理由だ。私はすぐに異議を唱えた。

「好きな人をパシリに使う人がどこにいますか!?」
「手下はボクにコキ使われて喜んでたよ。真由子も絶対に嫌だと言わないし、なんだかんだ言った通りに動いていたから……実は嬉しいのかなって、当時はそう思っていた」

 とんでもない勘違いに突っ込みを入れるのを忘れるくらいに唖然とした。動揺しながらも私は続けて必死に訴えた。

「た……確かに、黙って言いなりになってることが多くて、それは私が悪いけど、でも、全部じゃない! 例えば……昔、無理やり苦手な遊園地に……! 私、嫌だって言ったのに……!」
「あれは……自分の好きなことを、真由子にも好きになってもらいたいって、苦手なら克服させたいって思いが強かったんじゃないかな。今もまだそういうところがあると思う。それが真由子には意地悪をしているように感じるのかもしれないけど。今は求めるばっかじゃなくて相手を理解することも必要だってこと、少しは分かってるつもりだよ」

 人との交流をほとんどしてこなかった新谷のことを思えば、納得できるような、できないような、したくないような……。

「仲良くやれていると思っていたのは自分だけだったんだ。真由子が自分の前からいなくなってはじめて、あぁ自分は心底嫌われているんだなってことに気付いたよ」
「だったら……どうして、再会後も、こんな強引で勝手なことばかり……」
「他に方法が分からない。どうせ嫌われているんだし、再スタートは思い切り自己中になってもいいかなって思ってさ」

 新谷は吹っ切れたように小さく笑うと立ち上がった。軽い放心状態だった私は立ち上がるどころか立てていた膝が折れ、その場にペタンと座り込んでしまった。


< 101 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop