相容れない二人の恋の行方は
「ここは……?」
セレブ御用達の高級ブランドの路面店前だった。
天使がどうとか言っていたけど……ここにその天使がいるというの? ……ん? 天使?
弘毅さんの言う天使誰か、前にした彼との会話を思い出してなんとなく見当がついたけど、確認しようにも店の外観は全面にバッグや靴などがオシャレにディスプレイされていて中がクリアに見える作りになっていない。
その時だった。店の扉が開き、買い物客が出てきた。そして、その客に頭を下げる人物こそ。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
木崎さんだった。いつもの女の子らしいふんわりとした甘い雰囲気と違って、パンツスーツをぴしっとシンプルに着こなしている。パッと見、誰だかわからないかもしれない。そう思いながらじっと彼女に視線を向けていると、私に気づいた木崎さんが店の中から出てきた。
「真由子ちゃんだ! どうしたの、こんなところで」
いつものこぼれるような笑顔を見せながら近づいてくる。そしていつの間にか呼び名が真由子ちゃんになっている。目の前まで来るともう一度にっこりとほほ笑んだ。
「えっと……たまたま通りがかって。この間、接客の仕事をしているのは聞いていたけど、ここに勤めていたんですね」
「うん。真由子ちゃんの家から結構近いでしょ? いつでも寄ってね」
「は、はい……」
木崎さんはくすっと肩を揺らして笑うと「あー、また敬語に戻ってる」と言った。ハッとした時にはもう遅くて、完全に無意識だった。他の同年代の友達に接するときには普通に話すことが出来るのに。
木崎さんは弘毅さんに「こんにちは」と頭を下げて挨拶をすると「お友達?」と言って私を見た。
「え、えぇ……まぁ」
「あ、ごめんなさい。戻らなきゃ。上司に怒られちゃう」
「うん。こっちこそ、ごめんね」
「じゃあね」と出てきた時と同じ笑顔で手を振りながら木崎さんは仕事へと戻って行った。弘毅さんと店の扉がパタリと閉まるのをただ無言で見つめていると、今まで静かだった弘毅さんが急に口を開いた。
「やっぱり! 真由子も栄華だもんな! なに? やっぱり真由子あの子と同級生で知り合い? ていうか、友達!?」
「いや、その……」
「頼む」
「……ひぃっ」
突然両手を取られ、弘毅さんに真剣なまなざしで見つめられる。
「あの子との仲を、取り持って」
弘毅さんのめちゃくちゃな注文にも、今の手を取られている状況に我慢が出来なかった私は即頷いた。
セレブ御用達の高級ブランドの路面店前だった。
天使がどうとか言っていたけど……ここにその天使がいるというの? ……ん? 天使?
弘毅さんの言う天使誰か、前にした彼との会話を思い出してなんとなく見当がついたけど、確認しようにも店の外観は全面にバッグや靴などがオシャレにディスプレイされていて中がクリアに見える作りになっていない。
その時だった。店の扉が開き、買い物客が出てきた。そして、その客に頭を下げる人物こそ。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
木崎さんだった。いつもの女の子らしいふんわりとした甘い雰囲気と違って、パンツスーツをぴしっとシンプルに着こなしている。パッと見、誰だかわからないかもしれない。そう思いながらじっと彼女に視線を向けていると、私に気づいた木崎さんが店の中から出てきた。
「真由子ちゃんだ! どうしたの、こんなところで」
いつものこぼれるような笑顔を見せながら近づいてくる。そしていつの間にか呼び名が真由子ちゃんになっている。目の前まで来るともう一度にっこりとほほ笑んだ。
「えっと……たまたま通りがかって。この間、接客の仕事をしているのは聞いていたけど、ここに勤めていたんですね」
「うん。真由子ちゃんの家から結構近いでしょ? いつでも寄ってね」
「は、はい……」
木崎さんはくすっと肩を揺らして笑うと「あー、また敬語に戻ってる」と言った。ハッとした時にはもう遅くて、完全に無意識だった。他の同年代の友達に接するときには普通に話すことが出来るのに。
木崎さんは弘毅さんに「こんにちは」と頭を下げて挨拶をすると「お友達?」と言って私を見た。
「え、えぇ……まぁ」
「あ、ごめんなさい。戻らなきゃ。上司に怒られちゃう」
「うん。こっちこそ、ごめんね」
「じゃあね」と出てきた時と同じ笑顔で手を振りながら木崎さんは仕事へと戻って行った。弘毅さんと店の扉がパタリと閉まるのをただ無言で見つめていると、今まで静かだった弘毅さんが急に口を開いた。
「やっぱり! 真由子も栄華だもんな! なに? やっぱり真由子あの子と同級生で知り合い? ていうか、友達!?」
「いや、その……」
「頼む」
「……ひぃっ」
突然両手を取られ、弘毅さんに真剣なまなざしで見つめられる。
「あの子との仲を、取り持って」
弘毅さんのめちゃくちゃな注文にも、今の手を取られている状況に我慢が出来なかった私は即頷いた。