相容れない二人の恋の行方は
 お風呂を済ませた私は、部屋で一人、新谷にもらったメモ帳を手に固まっていた。
 木崎さんに電話をかけよう! と意気込んで電話を手に取って、そしてそっと置く。またメモ帳とにらめっこ。こんな行動をかれこれ30分は繰り返し続けていた。

「はぁ……」

 勇気が出ない。
 いきなり知らない番号からかかってきたら驚くかな? さらにその電話の相手が私だったらもっと驚くだろうな……今日会った彼女は仕事中だったし、もしかしたらもう疲れて寝ているかもしれない。……と相手の都合ばかりを考えてしまってなかなか踏み切れない。
 そっと部屋の時計に目を向けると午後11時を回っていた。
 今日は諦めよう。また明日にしよう。
 私は立ち上がると部屋の明かりを落とし、自分もベッドに横になる。

 どうして電話をかけるだけどいうこんな簡単なことが出来ないのだろう。
 元々内気な性格であったけど、ここまで酷くなかったし、同年代の女の子とはうまくやれていたはずなのに。

 私ははぁ、ともう一度大きな溜息をつくと目を閉じた。
 そしてその日夢に見たのは、高校時代の懐かしい夢だった。

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