相容れない二人の恋の行方は

25 私は信じません

「真由子ー」

 洗い物をしていると、ダイニングテーブルに座って雑誌を眺める新谷に呼ばれる。

「……なんでしょう」
「これ見てよ」

 濡れた手を拭いて新谷の元へと行くと、美味しそうなスイーツが特集されたページを見せられた。

「ここ、最近オープンした店らしくて、住所見たらこの近所……」
「あぁ、はい。昨日通りがかったんですけど行列が出来てました」
「このタルト、美味そうだよな~」
「……そうですね」
「真由子も食べたいだろ?」
「……別に」
「じゃあボクの分だけでいいや」
「はい!?」

 タルトが食べたいと言った時点で予感はしていたけど……しれっとした態度で要求され、分かっていたこと言えど毎度びびる。せめてもう少し、人に物を頼む態度ってあるよね……?

「もう顔の腫れも引いたし、明日からは学院に行くよ」
「だったら、ケーキも自分で並んで買いに行けば……」
「並ぶんだろ? 退屈じゃん。じゃあ、一緒に行こう」
「私は別に食べたくない……分かりました。私が一人で買ってきます」

 二人で並ぶよりは、一人の方がまだ気が楽だ。私はしぶしぶ了解する。「では」とそそくさとその場を立ち去ろうとすると、私の態度に違和感を感じた新谷にすぐに呼び止められる。

「普段からあまり目が合わないのは知ってるけど今日は特に酷い」
「別に……」
「とりあえず座れよ」
「まだ洗い物が……」
「座って」

 はっきりとした口調で命じられ、新谷の向かいのイスを指差される。仕方なく一度腰を下ろす。でも正面からの視線を感じて落ち着かない。

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