相容れない二人の恋の行方は
 起きた時はまだ外も薄暗かったけど、私が外に出た時は陽ものぼり外は明るかった。それでもまだ早朝の街はコンビニ以外は閉まり、車や人通りも少なく静かだった。
 私はそんな街の中をあてもなくゆっくりと歩く。

 歩きながら時々すれ違うスーツ姿の人々。早朝にも関わらず、もう出勤している人たちもいる。
 来週にもなれば新谷の頬の腫れや赤みも引き、私たちも学院に行くこともできるだろう。
 長時間室内にこもりっきりでいるのは息が詰まる。新谷の傷を見るたびに罪悪感を感じて、その時のことを思い出していたたまれない気持ちになる。ついには変な昔の夢を見るまでにもなって……なんだか心にモヤがかかったみたにすっきりしなくて、気持ちが悪い。

 ぼうっと歩き続けていると人通りがどんどんと増えてきたことに気付く。それもそのはず、私はマンションからの最寄りの駅に向かって歩いていた。駅に近づくにつれ人が増えるのは当然だった。
 そろそろ引き返そう。そう思って方向転換をしようとしたその時だった。

「吉井さん!? 吉井さんじゃない!」

 自然と背筋がピンと伸びてしまう聞き覚えのある声。振り向くと、ついこの間まで平日は毎日顔を合わせていた人物が仕事中には決して見せないリラックスした笑顔を見せていた。

「こ、河本さん!」
「早いわね。もう出勤? ってあなたのそれ、出勤する格好ではないか」
「私はたまたま早起きしたので外の空気を吸おうと……河本さんこそ、こんな朝早くに……?」
「えぇ。わたしたちは自分の都合で仕事は出来ないもの。このくらい早く出勤することなんてよくあることよ」
「そうですね……」
「吉井さんって家この辺だったっけ? たしか……」
「ちょっと事情がありまして。引っ越したんです」
「そう。新しい職場ではうまくやれてる?」
「は、はい……」
「驚いたわよ。急に社長の息子さんに引き抜かれて」
「私……戻れるのでしょうか……?」
「相手先がいらないって言ったら戻ってこられるんじゃないかしら。あなたの籍はまだうちの会社にあるし」

 少しだけほっとしたのもつかの間、直後に、河本さんから私を動揺させる言葉が出たのだ。

「戻りたいの? ……詮索するつもりはないけど。あなたと息子さん、他人ではないみたいだし。むしろ、それなりの関係なんじゃないかなって。勝手な予想だけど」
「……はい?」
「意識を失って倒れたあなたにさっと駆け寄って抱き上げて出て行く姿を見て、あのあと他の若い子たちはみんなきゃあきゃあ言って沸き立ってたわよ」
「……」
「おっと。ごめん、電車が来ちゃうわ。じゃあ、吉井さん。またね」

 足早に駅へと足を進めて行ってしまった河本さんに挨拶を返すことすらできない失態をおかしたけど、そんなことにすぐに頭が回らないほど。
 ただただ、身体の体温が一気に上がって顔が燃えるように熱い。

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