相容れない二人の恋の行方は
「真由子ちゃーん! 千智ー!」

 聞き覚えのある声に顔を上げると、正面から木崎さんが手を振りながら小走りで走ってくる。彼女の姿を確認して私たちはゆっくりと立ち上がる。
 そんな木崎さんを追い、直前のところで追い越した弘毅さんが一目散に新谷の前へとやってくるとぐっと距離を縮めた。

「頼む千智! まなみちゃんにはおまえとは昔悪さしていた仲間だってこと言ってないし言いたくないんだけど……!」
「……大丈夫。生徒会でのつながりだって言ってあるから」
「さすが!」

 言いたくないと言いながら丸聞こえの声で新谷に告げる弘毅さんの声を耳にしながら、私は咄嗟の判断で木崎さんの耳を塞いでいた。

「真由子ちゃん? なにー?」
「いえ、なんでも……。急にごめんなさい」

 耳から手を離すと不思議そうに瞬きを繰り返す木崎さんと対面する。
 いつもは可愛らしくアレンジしてまとめている長い髪を今日はさらっと大人っぽく下ろしていて、見慣れていないせいかいつもより綺麗に見える。洋服も、ピンクと白の組み合わせがここまで似合う人、私は他に知らない。

「ごめんね、遅くなっちゃって。今日は自分が誘ったんだからってがんばってちゃんと予定通りに家を出てきたんだけど……迎えに行った弘毅君が寝てて全然出て来てくれなくて。連絡、何度か入れたんだけど……」
「そ、そうだったんだ……ごめんなさい。気付かなくて……」
「ううん。全部私が悪いの。弘毅君に、約束の日を間違えて違う日で伝えてて……」
「別にいいよ? 気にしないで?」

 しょんぼりする木崎さんをなんとかなだめながら、隣では新谷と弘毅さんがこの間のわだかまりは感じさせない雰囲気で会話をしている。

「この間は悪かったな。ちょっと私情を挟み過ぎて本気になっちまった。すべてのはじまりは俺の勘違いが原因だった」
「私情? 勘違い? ……よく分かんないけど。もうなんともないからいいよ」
「ま、あれくらいどってことないよなぁ。俺なんか昔お前に病院送りに……」

 ……気さくな雰囲気だけど、内容は恐ろしい。でも、仲直り……出来たのかな?

「ごめんね、ごめんね……」
「も、もういいから……」

 とりあえず、木崎さんを誰かどうにかしてくれないかな……落ち込み方がかなり深刻だ。

「せ、せっかく合流できたことだし……今来たばっかなんだよね? 何か乗り物に乗らない!?」

 私の提案に木崎さんはようやく顔を上げた。

「実は……今弘毅君とアレ乗りたいねーって話してたの。私絶叫系は苦手だけど……」

 木崎さんの指差す方向にそびえ立つあの乗り物は。

「高いところは好き。観覧車!」
「……うん」

 やっぱり今回も、観覧車には乗らなくてはいけないようだ。

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