相容れない二人の恋の行方は
「前に逃げ出した時の一番の理由は分かってるんです。誰が、というより自分が嫌だったんです。高貴で優秀で美しくて、自分とは生きる世界が違う人たちに囲まれて毎日のように引け目を感じて……それは今も変わってません」
握手をするようにして交差して繋がる手を見つめたまま、まるで独り言を呟くように無心で言っていた。
「特にあなたとは、高くて越えられない厚い壁が何重にも重なっているほどの距離を感じて……それが、苦しいから……だから一緒にいたくなくて」
「それはつまり、裏を返せばボクと並んで歩きたいってこと?」
「は……はっ!? なんでそうなる……っ」
「そうとしか聞こえない」
「違います! あ、あなたみたいな何もかもが相反している人と分かち合えるなんてこと絶対にありえないし無理だし……そ、それに、手! 離してくれませんか!?」
会話中は自分でも分からない気持ちに向き合うのに必死で、離してほしいとか、恥ずかしいとかいう感情は沸いてこなかったのに、急に照れくさくなって手を離そうと上下に振っても離してくれない。
「くっ……は、離せぇ……っ!」
「……これが真由子の本気? 顔はマジだけど、力がしょぼい」
「ぬ……ぬぁぁっ」
懸命になればなるほど新谷のツボにはまるのか、吹き出し、声を上げて笑い出したのを機に私は力を抜ききっと相手を睨みつけるように見上げた。
すると私の視線に気づいた新谷は笑いを止めたけど、それでもまだ面白いのか、結んだままの唇にほほ笑みを浮かべたままじっと私を見据えた。
その時、ちょうど今の私たちと同じような、昔の情景が思い浮かんだ。
頬を赤らめた制服を着た私が、柔らかな微笑みを浮かべ手を差し出す新谷に引き寄せられるように自分の手を彼の手と重ね握手を交わした。
あの時、それまでにない大きな胸の高鳴りを感じて……
「……っ」
「真由子!?」
足が折れ、その場にすとんと落ちる。
「うわべだけに惚れたっていいことないんですよ、絶対に……」
「……は?」
あの時はまだ新谷の本当の性格の悪さを知らなかったから、見た目とは違う、裏で不良と付き合うちょっと悪いところも、自分を守って助けてくれた強くたくましい面を思えば格好いいと思って麻痺していた部分があったのかもしれない。
「特にあなたなんて……性格破綻者で……」
「社会生活が出来ないとは失礼な。普通を演じることは出来る」
「それは違うんじゃ!?」
捕まれていた手はいつの間にか離れていて自分の膝の上に落ちていた。その右手だけがやけに熱い。
「そうだよ、その通りだよ。前にも言ったけど真由子とは出会いがあんな形だったし、その後も自分の気持ちに気づかないまま……何か新しく楽しめることが欲しいと思っていた時期に出会ったのが真由子だったから、君には一切飾らない自分をさらけ出してきた」
「……」
「でも、真由子はそんなボクと毎日一緒にいた」
「それは……」
「でもほんとは、嫌だった?」
頭上から聞こえていた声も、いつの間にか近くに、新谷もまた床に座り込んでいた。私は近くの新谷の気配を感じながら床に目を向けたまま小さく呟く。
「嫌でしたよ」
ゆっくりと視線を上げていく。足元、膝に乗せた手、腕、首元……
「本当は……向かい合って、目を見て……後ろばっかじゃなく隣を……」
そして、ぴったりと視線が合ったその時だった。
握手をするようにして交差して繋がる手を見つめたまま、まるで独り言を呟くように無心で言っていた。
「特にあなたとは、高くて越えられない厚い壁が何重にも重なっているほどの距離を感じて……それが、苦しいから……だから一緒にいたくなくて」
「それはつまり、裏を返せばボクと並んで歩きたいってこと?」
「は……はっ!? なんでそうなる……っ」
「そうとしか聞こえない」
「違います! あ、あなたみたいな何もかもが相反している人と分かち合えるなんてこと絶対にありえないし無理だし……そ、それに、手! 離してくれませんか!?」
会話中は自分でも分からない気持ちに向き合うのに必死で、離してほしいとか、恥ずかしいとかいう感情は沸いてこなかったのに、急に照れくさくなって手を離そうと上下に振っても離してくれない。
「くっ……は、離せぇ……っ!」
「……これが真由子の本気? 顔はマジだけど、力がしょぼい」
「ぬ……ぬぁぁっ」
懸命になればなるほど新谷のツボにはまるのか、吹き出し、声を上げて笑い出したのを機に私は力を抜ききっと相手を睨みつけるように見上げた。
すると私の視線に気づいた新谷は笑いを止めたけど、それでもまだ面白いのか、結んだままの唇にほほ笑みを浮かべたままじっと私を見据えた。
その時、ちょうど今の私たちと同じような、昔の情景が思い浮かんだ。
頬を赤らめた制服を着た私が、柔らかな微笑みを浮かべ手を差し出す新谷に引き寄せられるように自分の手を彼の手と重ね握手を交わした。
あの時、それまでにない大きな胸の高鳴りを感じて……
「……っ」
「真由子!?」
足が折れ、その場にすとんと落ちる。
「うわべだけに惚れたっていいことないんですよ、絶対に……」
「……は?」
あの時はまだ新谷の本当の性格の悪さを知らなかったから、見た目とは違う、裏で不良と付き合うちょっと悪いところも、自分を守って助けてくれた強くたくましい面を思えば格好いいと思って麻痺していた部分があったのかもしれない。
「特にあなたなんて……性格破綻者で……」
「社会生活が出来ないとは失礼な。普通を演じることは出来る」
「それは違うんじゃ!?」
捕まれていた手はいつの間にか離れていて自分の膝の上に落ちていた。その右手だけがやけに熱い。
「そうだよ、その通りだよ。前にも言ったけど真由子とは出会いがあんな形だったし、その後も自分の気持ちに気づかないまま……何か新しく楽しめることが欲しいと思っていた時期に出会ったのが真由子だったから、君には一切飾らない自分をさらけ出してきた」
「……」
「でも、真由子はそんなボクと毎日一緒にいた」
「それは……」
「でもほんとは、嫌だった?」
頭上から聞こえていた声も、いつの間にか近くに、新谷もまた床に座り込んでいた。私は近くの新谷の気配を感じながら床に目を向けたまま小さく呟く。
「嫌でしたよ」
ゆっくりと視線を上げていく。足元、膝に乗せた手、腕、首元……
「本当は……向かい合って、目を見て……後ろばっかじゃなく隣を……」
そして、ぴったりと視線が合ったその時だった。