相容れない二人の恋の行方は

30 自覚

「うおっ! なんだよ、千智! おまえこんなすげぇとこ住んでんの!?」

 明かりの灯った部屋に、驚きに声を上げる弘毅さんと木崎さんがやってきた。
 弘毅さんはソファに座りそっぽを向く新谷の前に立つと「おまえ一体どこのボンボンなんだよ?」と言った。
 弘毅さんの問いかけに答えない新谷の代わりに、弘毅さんに続いて部屋の中へと足を踏み入れた木崎さんが言った。

「あれ~? 弘毅君知らなかったの? おじい様が学院経営をなさってて、お父様も起業して成功されてる経営一家だよ?」
「まじで!? 俺んとこと一緒じゃん?」
「弘毅んとことは業種が違うし、何より規模が違うと思うけど」
「うわー……みなさん、聞きました? 感じわるー……」

 弘毅さんは新谷を指差しながら木崎さんと私に彼独特の豊かな表情で言った。木崎さんは声を上げて笑って、二人が来てからさっきまでの雰囲気と一変してがらっと明るくなった。
 新谷と弘毅さんはそのまま二人で何か出前でも取ろうと他愛のない会話を笑顔でかわし、そんな様子を少し離れた場所から眺める私の元へ木崎さんがやってきた。
 そして申し訳なさそうに一言「来ちゃってごめんね」と告げると、「お腹空いたよ!」と言いながら新谷たちの会話にまざった。
 私は一人飲み物の準備をするためにリビングを離れダイニングの方へと向かう。

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