相容れない二人の恋の行方は
翌朝、木崎さんは宣言通り、二日酔いで足元のおぼつかない弘毅さんを半ば強引に連れてマンションを出て行った。
その後、昨夜の片づけを黙々としている私を新谷はじっと座って目で追っている。片づけが終わるのを待っているのだろうか。だったら、少しは手伝ってくれてもいいのに……
心の中で文句を言いながら、流しに集めた洗い物に手をかけようとすると、手伝うどころか待つことにもしびれを切らしたであろう新谷が私の隣へ立った。
「今日は、澄ました顔してるけど」
「……なんですか? 今忙しいので用事ならあとに……」
「真由子」
名前を呼ばれ手が止まる。ついこの間までとは違う。隣にその存在を感じるだけで確かに私の心拍数は上がる。
私は一度唇を噛みしめてから、意を決して口を開いた。
「しばらくは今のままでいさせてくれませんか?」
「急になに。最初から説明して」
「だから……まだ、色々と納得できないことが多くて……自分の気持ちも、確信できるものではないし」
「そんなに赤い顔をして?」
「……っ」
たまらず俯いた。
おそらく、いや、間違いなく私は今新谷の言ったとおり赤い顔をしているのだろう。それも指摘をされてさらに熱が上がる。
「これは、その……っ」
「ボクたち、両想いだね」
「だからそれは!」
「真由子の言いたいことはなんとなく分かってるよ。ボクも別に急いで関係を深めたいとは思わない。今更、ね」
「……え?」
相手の言葉の意味を理解しようと頭をフル回転させるけど、俯いた視線の先に、カウンターに乗せた新谷の指先が映って、それだけで胸の鼓動が邪魔してうまく頭が働かない。
「ちゃんと真由子のペースに合わせる。だから安心していい」
「あ、ありがとうございます……」
私は今誰と話をしているのだろう。そう思ってしまうほど常に自分中心の新谷の言葉とは思えない発言に呆然とした。
でも、今まで二人きりでいても何もなかったことを思えば、最初から彼は私のペースに合わせてくれていたことになる。
新谷に対し感心し惚れ直すような気持ちが増す一方、惑わされるなと自分に言い聞かせる二つの気持ちがぶつかる。
「というわけで、今日からボクたちは恋人同士だ」
その一言に、たった今頭の中に渦巻いていた事柄は一瞬にして消え去った。
その後、昨夜の片づけを黙々としている私を新谷はじっと座って目で追っている。片づけが終わるのを待っているのだろうか。だったら、少しは手伝ってくれてもいいのに……
心の中で文句を言いながら、流しに集めた洗い物に手をかけようとすると、手伝うどころか待つことにもしびれを切らしたであろう新谷が私の隣へ立った。
「今日は、澄ました顔してるけど」
「……なんですか? 今忙しいので用事ならあとに……」
「真由子」
名前を呼ばれ手が止まる。ついこの間までとは違う。隣にその存在を感じるだけで確かに私の心拍数は上がる。
私は一度唇を噛みしめてから、意を決して口を開いた。
「しばらくは今のままでいさせてくれませんか?」
「急になに。最初から説明して」
「だから……まだ、色々と納得できないことが多くて……自分の気持ちも、確信できるものではないし」
「そんなに赤い顔をして?」
「……っ」
たまらず俯いた。
おそらく、いや、間違いなく私は今新谷の言ったとおり赤い顔をしているのだろう。それも指摘をされてさらに熱が上がる。
「これは、その……っ」
「ボクたち、両想いだね」
「だからそれは!」
「真由子の言いたいことはなんとなく分かってるよ。ボクも別に急いで関係を深めたいとは思わない。今更、ね」
「……え?」
相手の言葉の意味を理解しようと頭をフル回転させるけど、俯いた視線の先に、カウンターに乗せた新谷の指先が映って、それだけで胸の鼓動が邪魔してうまく頭が働かない。
「ちゃんと真由子のペースに合わせる。だから安心していい」
「あ、ありがとうございます……」
私は今誰と話をしているのだろう。そう思ってしまうほど常に自分中心の新谷の言葉とは思えない発言に呆然とした。
でも、今まで二人きりでいても何もなかったことを思えば、最初から彼は私のペースに合わせてくれていたことになる。
新谷に対し感心し惚れ直すような気持ちが増す一方、惑わされるなと自分に言い聞かせる二つの気持ちがぶつかる。
「というわけで、今日からボクたちは恋人同士だ」
その一言に、たった今頭の中に渦巻いていた事柄は一瞬にして消え去った。