相容れない二人の恋の行方は
 私はずっと新谷の周りにいる人に対して引け目を感じて、特に木崎さんには強い劣等感を抱いていた。一緒にいるだけで差を見せつけられているような感じが苦しくて、だから彼女からの好意は素直に受け取れなかったし、距離を縮めてこようとする彼女に対して見えない壁を作って必要以上には近づこうとはしなかった。それはつい最近まで。
 それでも、そんな私に対して木崎さんはいつも変わらず親切に笑顔で接してくれていた。
 じわっと滲む涙を服の袖で拭った。

「木崎さん、起きてる?」
「……うん、なに?」
「今度……一緒に、買い物に付き合ってくれない?」
「うん、いいよ。喜んで」
「洋服とか、メイクも、美容も。木崎さんには教わりたいことがいっぱいあるの」
「え~? やだぁ、それはこっちの台詞だよぉ? でも……ふふ。嬉しい。真由子ちゃんから誘ってもらえるなんて」

 心の奥底に潜む想いにずっと気づかなかった私は、心のどこかでずっと木崎さんのことを疎ましく思っていたのだ。でも自分の気持ちに気づき、新谷と木崎さんの関係を疑ってずっと心の中でモヤモヤとしていたすべての誤解が解けた今、はじめて私は木崎さんに対し素直になることが出来た。
 身勝手で卑怯な自分と木崎さんに対しての申し訳なさに、またじわっと涙が滲む。

「……本当に、ごめんなさい」
「えっ? また、急になぁに? もう……」
「……ごめん」

 木崎さんは私が謝る理由にそれほど興味がないのか、それとも本当は分かって聞いてこないのか。それは分からなかったけど、一切追及はしてこなかった。

「よく分かんないけど……許す! その代わり……」
「え?」
「ちゃんと自分の気持ち伝えなよね。まさか恋人同士じゃなかっただなんて……遠回りしすぎだよ、真由子ちゃんと千智」
「で、でも……」
「明日朝、弘毅君連れて邪魔者はさっさと出て行くから」
「……あ、そうだ。木崎さんは弘毅さんとのこと、どうす……」
「……ごめん真由子ちゃん……わたし、もう眠たくなってきちゃった……」
「うん、ごめん。続きはまた今度」

 木崎さんからの返事はなかった。代わりに穏やかな寝息が聞こえてくる。

「ねぇ、木崎さん……」

 無意識に声に出しながら木崎さんに聞くことじゃない、どうせ聞いても返事はもらえないとはっとして気付き、続きは心の中で。
 新谷は私のどこが好きなんだろう?
 いくら自分の気持ちに気づいたとは言え、手放しで喜べる状態にはない。私を好きだと言った相手の気持ちは半信半疑。いや、疑わしく思う気持ちの方が強いくらいだ。
 今も別に、私は新谷と恋人同士になりたいわけじゃないし……。今のままの状態、距離感で私はいい。やっぱりまだよく、恋って分かんない。
 そんなことを思いながら眠りについた。

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