相容れない二人の恋の行方は
「ごめんて、ほんとに悪いと思ってるんですか!?」
「なんの話だよ。裸の話はもう終わってるけど」
「なっ!」

 またさらっと……表情は見れないけど、きっと悪びれる様子なく涼しい顔をして言ってるんだ。

「い、行けるわけないじゃないですか! 何を言って……!」
「何もしないよ。場所も場所だし、真由子に合わせるって言った」
「だ、だったら……」
「練習。だってさ、そんな調子でこの先どうする? まずはいいかげんボクに慣れてくれない?」
「で、でも、もっとこう、物事には順序が……!」
「添い寝って恋愛過程でいうとかなり初期段階だと思うんだけど。だいたいのカップルがそんなのすっ飛ばして……」
「初期はまず、互いを知り合い、距離を縮め、まずは手を繋ぐことからでは……!」

 言いながら、そんな経験ないな、と思った。
 新谷の言う通り、過去の少ない恋愛経験からいくといきなり部屋に連れ込まれて襲われたっけ……。

「ふーん、仕方ない。互いを知り合うっていうのはボクたち結構長い付き合いだからいいとして次は手か。よし、繋ごう」
「……はい?」
「おいで」
「は!?」
「こないならボクがそっちに……」
「わ、わわ! ちょっと待って! 分かった、行きます、行きますから!」

 来られたら逃げられない。せめて、自分のタイミングで行きたい。
 何度か深呼吸を繰り返して、意を決して立ち上がる。新谷の思うがまま操られていることは分かっていたけど、心のどこかで、私も今のこの関係を変化させていきたいという思いはあった。だから勇気を振り絞る。
 ゆっくりと、開かれた掛布団の中へと入る。横になると掛布団がかけられてふわりと温かい熱とお風呂上りのせっけんの匂いに包まれる。
 シングルサイズのベッドではいくら新谷が壁際に寄ってくれても相手の存在を間近に感じる。

「手、いい?」
「え……?」

 今までにない間近で響く新谷の声。でも、そこへ意識がいったのは一瞬で、すぐに全身の意識が包まれた自分の右手に集まる。

「……冷たっ」
「だ、だって……布団に入ってなかったから……」

 冷たい指先を包む温かい手。

「この状態で眠れるかな」
「だ、だったらやっぱり元の場所に」
「だめ」

 そして頭上から降ってくる声と吐息。
 なんなのこの……高まる胸の鼓動、息苦しさ、そして、ときめき。こんなの生まれて初めてだ。

「おやすみ」
「お、おやすみなさい……」

 最後に一度ぎゅっと手に力が込められるのを感じて、トクンと大きく胸が高鳴った。

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