相容れない二人の恋の行方は

35 つかの間の恋愛モード?

 再び外に出るとまだ外も明るく、先ほどと変わらず休日の街中は多くの人が行き交っている。
 新谷と外を出歩くことは今まで幾度となくあったけど、最近、これまでとは違うある変化が生まれた。

「真由子」

 名前を呼ぶのと同時に立ち止まった新谷の後ろで同じく立ち止まる。そして振り返った新谷が手を差し出して言った。

「手」

 私はごくりと息を飲み込んでからゆっくりと自分の手を差し出す。すると触れ合う直前にがっちりと捕まれぐいっと引かれる。一歩前に出て横に並ぶと新谷はにっと控えめに口角を上げた。

「こうやって歩きたかったんだろ?」
「そ、そんなこと言ってません」
「言った」
「……っ」

 同時に並んで足を進める。
 新谷の言う通り、たしかに心のどこかで憧れていた部分はあった。でも自分に自信のない私の後ろ向きな気持ちが、自分の気持ちを自分自身にすら隠し続け、新谷本人や周りの人間には劣等感を抱いて一緒にいればいるほど自分が嫌になって自分がどんどん醜い人間に思えると言う悪循環に陥っていた。
 でも新谷と離れた四年間で色々と経験した私は、再会後、他の男性には感じなかった誠実さや安心感、力強さ、その他特別な感情を抱いていることに微かながら気づきはじめていて、だから四年前のように逃げることはしなかった。これが、自分自身で導いた今までの私のすべて。
 この気持ちって恋なのかな……? 
 新谷との再会から、私の23年間の人生で味わったことのない急展開が続いていて心がついていけていないのが正直なところだ。

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