相容れない二人の恋の行方は
「ちょっと……まって……っ」
「……ん、なに?」

 顔の横に肘をつき手は私の頭の上に置き、近距離で私を見下ろしてくる。そしてあいたほうの手で私の頬に触れると親指が唇をなぞった。
 待ってはくれているみたいだけど……この状態で止まっている方が辛い。

「なんでも、ないです……」

 すると今度は上から降ってくる押さえつけるような重みのあるキスに簡単に口をこじ開けられてしまう。
ひんやりとした舌先に追いかけられてすぐに捕まると甘く絡みとられて逃げられなくなる。ぴったりと くっついた唇が動くたびにできる小さな隙間から必死に酸素を取り込もうとするけど、それも次第に頭がぼうっとして真っ白になって何も考えられなくなると全身の力が抜けてされるがままになる。

「ふっ……んん……」

 隙間から漏れる声は自分のものとは思えないほど甘ったるいものだったけど、恥ずかしさを感じて止める余裕もないほど夢中になっていた。
 いつもの自分じゃないみたいだ。身体は思うように動かない、力が入らない、頭も働かない。私、どうなっちゃうの……?
 怖いよ、と新谷の服を掴むとその手を新谷の手が包み指を絡めシーツの上へと落とした。

「怖くない。真由子は余計なことは何も考えないでボクを信じて身を委ねて」
「そんなこと言われても……」
「どうしてもというのならいくらでも待つ」
「……続きは後日、でも?」
「まさか。夜はまだ長い。ゆっくり時間をかけてでも朝までにはボクのものになってもらうおうと思う」

 相変わらずためらいもなく発せられる言葉。それも今までにない甘いムードの漂う雰囲気の中、密着した状態で告げられれば恥ずかしくて耳を覆いたくなるほど。
 目が合うと柔らかに口角を上げ目を細めた。そして唇を優しく舐められ、音を立ててキスをされるとたまらず目を閉じた。口を小さく開けば口内に入っていた舌が私の舌を追いかけて追い詰めて深く絡みあう。

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