相容れない二人の恋の行方は
 キスを繰り返したまま新谷の手が私の洋服へとかかる。カーディガンを片方の腕から抜き、私の背中を浮かせると一気に抜き去る。そして白のブラウス姿になると腰から脇腹にかけてゆっくりと撫でられる。
 色気もなにもない完全な仕事着。いつも通りと言えばいつも通りの私だけど、はじめての時くらい綺麗で可愛い格好をしてみたかったかもと柄にもなく乙女な思考をめぐらす。ブラウスの下には防寒対策に可愛さのかけらもない無地の肌着を身に着けているし……。

「どうした真由子。考え事?」
「……えぇ、まぁ」

 唇が降れるか触れないかの距離で問いかけられ、首を横にそむけながら返事をした。
 私の身体を撫でていた新谷の手が服の上から胸に触れて思わず身をびくっと震わせた。

「あっ……や……」

 さらに新谷の唇が首筋にキスを落としながら滑っていく。時々強めに吸われるとちくっとした痛みを感じた。

「……だ、だめっ……跡が……」
「このくらいで跡はつかないよ」
「でも……私っ」

 身を僅かに起こした新谷がおそらくうっすらと赤くなっている首筋に目を向けて「へぇ」と小さく呟いた。

「真由子、跡がつきやすいんだ」
「んっ……!」

 言いながら空気に触れたその場所を冷たい指先でなぞられるとびくっと身体が跳ねる。新谷はブラウスのボタンに指をかけ、上から数個をはずすと新たに空気に晒された場所に次々とキスを落とすとその場所をじっと見ながら言った。

「真由子って夏でも制服のボタンをしっかり全部留めてスカートの長さも標準通りだっただろ。めったに肌を露出しない身持ちの固そうなところもボクは好きだった」
「露出……めったにというか、しませんけど。身持ちが固いと言うか……地味なだけですけど……」
「うん。綺麗になって華やかさが増したけど根は昔と変わってない」
「や、……あ、んっ……」

 再び唇が重なりブラウスの隙間から侵入した手が肌着の上から胸に触れた。その手の上から自分の手を使って払おうとしても、私の胸に触れて動く手の動きと触れられていることを実感するだけでかえって変な気になるだけだった。

「心臓、早いね」

 呟いた後小さな音を立てて唇が離れると新谷が身体を起こし、自身の身に着けている洋服に手をかけながら瞳はじっと私に向けたまま口を開いた。

「ボク以外の男が真由子に触れて、跡を残した。考えるだけで嫉妬がおさえられない」
「で、でも……最後までは……」
「分かってる。なぁ、真由子……脱がしてもいい? 全部」
「え……」
「見たい」

 ひたむきな視線に大きく胸が高鳴って一瞬息が止まった。
 私は肘をつきゆっくりと起き上がると、自分のブラウスのボタンに手を掛けた。でもコートの時と同じで緊張で震える指先ではうまくボタンが外せなくて、上半身薄手のシャツ一枚になった新谷が私のブラウスに手をかけた。
 そしてあっという間に肌着も奪われスカートのファスナーも下ろされると下着のみの姿になってしまった。両手で身体を覆い隠しながら、何か自分を覆えるものはないかとキョロキョロしていると、伸びてきた腕に捕えられてその胸の中にすっぽりと収まった。

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