相容れない二人の恋の行方は
「あなた、一人息子でしょう? お家はどうするんですか!?」
「弟がいる」
「……はい? でも前に兄弟はいないって……」
「最近生まれたんだ」
「……?」

 はっとして目を大きく見開くと、新谷は口の端をあげてニヤリと笑った。

「出産予定日はまだだいぶ先だったんだけど、よりによってジャングルの奥地にいる時に産気づいて……。家族全員、医療チームを引き連れて電気も満足に通わないような場所での出産だったよ。って、ボクたちが着いたときはもう無事に生まれていたけど」
「お、お母さんおいくつ……?」
「ボクは両親が18の時の子だから41だよ。弟も、全然アリだろ?」
「まぁ……」

 新谷は産後の母と弟に会いにしばらくの間留守にしていたんだ……。ひとまずは、ここは納得する。

「祖父も父もまだ元気だし、学院は他にも理事はいるし、別にどうしても血縁者に経営を引き継ぎたいわけでもない。祖父も父も親から引き継ぐことなく自分で事業を起こしているからね。だから同族経営に強いこだわりはないんだ。みんな好き勝手やってる」

 新谷は私の手を両手でぎゅっと握りしめると、じっと私を見つめた。

「いつまでも待たせるわけにはいかないからタイムリミットを決める。三年以内。三年以内に司法試験に合格してみせる」
「……出来なかったらどうするんですか」
「出来ないことなんか今まで一つもなかった。出来る」
「……あの」
「だから真由子、三年後に結婚しよう」

 新谷の話は私からしてみたらあまりに現実離れし過ぎていてうわの空で聞いていた話も、最後の一言だけはずっしりと響いてきた。一瞬、時間が止まってすべての音源がプツリと途切れたかのように頭の中も音も視界も無になった。

「……いっつも……なんなんですか……一体。発言が……唐突で、奇抜すぎますよ……」

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