相容れない二人の恋の行方は
 部屋に入ると、幼馴染のまなみが使用人に用意させたお茶と茶菓子を頬張りながらくつろいでいた。

「おかえり! 遅かったね?」
「うん。どうしたの、こんな時間に」
「どうしたもこうしたも……明日からテストでしょ? 今回も追試になっちゃうとママに高等部に進学したら家庭教師つけるって言われちゃったの。お願い、助けて?」
「別にいいけど……全く勉強をしにきた感じに見えないんだけど」
「やる! 今からやる!」

 まなみはテーブルに広げたティーセットを素早く片付けて床の上へと下ろすと、自分で自宅から用意してきた勉強道具を広げた。どうやら真面目に勉強をしに来たというのは本当みたいだ。

「……ん?」

 まなみの隣に腰掛けると彼女が声を上げて小さく反応した。そして僕の目を見てにっと笑った。

「女の人の匂いがするわ。女の人のところに行っていたのね? 彼女? タバコの匂いも少し……? ということは年上ね?」
「きみ怖いよ」
「大丈夫よ。島田のおじいちゃんには絶対に言わないから」
「たぶんバレてる」
「ふふ、さすがスーパー執事ね!」

 まなみは他人ごとのようにクスクスと肩を揺らして笑っている。

「才色兼備、栄華の星、みんなの憧れ! 向かうところ敵なしの千智が唯一敵わない相手だもんね?」
「才色兼備というのは女性に対して使う言葉だよ」
「そうなの? はっ、そうだ。勉強!」

 そう、島田がいる限り僕に自由はない。早く隠居してくれないかな。
 まなみがペンを手に取りテキストに目を向けたのは一瞬で、すぐにテーブルに顔を突っ伏した。

「いいなぁ~……私も恋したい。彼氏欲しい……」

 無言でいるとまなみは同じ言葉をもう一度繰り返した。僕は仕方なく口を開く。……敵わない相手がここにもう一人いる気がする。

「欲しいなら、まなならすぐ……」
「無理よ。だって、学院では千智の恋人だってみんな思っていて……」
「別に、違うんだから違うって言えばいいよ」
「千智が言ってよ」
「それは……」
「……そうよね、都合がいいものね。私と言う虫よけがあれば女の子が寄ってこないから楽よね」
「それを言うならまなもだろ?」

 じっと目を合わせると、まなみは頬を膨らませながら目を逸らした。

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