相容れない二人の恋の行方は

06 思わず現実逃避したくなる光景

「今日から夏休みの間だけお手伝いに来てくれることになった吉井真由子さん。色々、教えてあげてね」

 目の前に、私の知らない世界が広がっていた。
 濃紺のワンピース、フリルの付いた白いエプロンを組み合わせたエプロンドレスを着て、同じく白いフリルの付いたカチューシャ。唯一スカート丈だけがひざ下で長いこと以外は、いわゆる、オタク文化において典型とされる家政婦(メイド)さん。そんな格好をした女性たちがずらりと横一列に並び、新谷(ご主人様)の呼びかけに一斉に口を揃える。

「かしこまりました。千智様」

 異様な光景を目の前に、ここはドコ、わたしはダレ? と思わず現実逃避をしてしまった夏休み初日。私の、地獄のような日々のはじまりだった。


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