相容れない二人の恋の行方は

番外編1:新谷視点(4)高3

 編入生の吉井真由子と僕はすでに出会っていた。
 数日前に街で不良に絡まれていた彼女を偶然その場を通りがかった僕が救った。その彼女にちょっかいをかけていたその不良というのは、あまり関わりはないが僕の知り合いでもあるのだが。

 だから吉井真由子が学院で再会した僕を見て驚くのも無理はない。ここにいる時の僕と、あの時不良を一蹴した僕はまるで別人だと思うから。

 彼女を呼び出し、とりあえず口封じのために軽く脅しをかけてみたが、すぐにそれは必要ないと分かる。
 常に怯え気弱そうな彼女に僕の悪行をバラすようなことも、僕の弱味をエサに脅迫するような勇気もないだろう。
 案の定、すべてを見なかったことにして関わりを絶とうとしてきた。
 僕としては望み通りの悪くない申し出ではあったけど、それはそれでつまらないなと思った。

 この吉井真由子という女子。
 とても同い年とは思えないほど幼い。やぼったいというか……都会育ちの背伸びをした人間に囲まれているせいもあるかもしれないが、この僕が他人にも関わらず不安を感じてしまうほどに全体的に頼りない。
 こんなんで大丈夫なのだろうか。同じクラスにはあの宮小路さんもいるというのに。

 ヒーローを気取るつもりはないが救ってあげようか。彼女にとっては幸か不幸か分からないが僕は同じクラスだし、渡辺さんの二の舞になるようなことはないしたくないと思った。

 ここ最近は酷く退屈だった。
 今まで出会ったことのないタイプの同級生に興味はあった。
 最近思うように外に出て遊べない僕の、ストレスを発散させてくれるだけの退屈しのぎになるだろうか。

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