相容れない二人の恋の行方は
 すっかり真由子のことが気に入った僕は夏休みも自宅で真由子と過ごすことにした。
 自分の思うようにする。自己中心的で常識を外れた破天荒といってもいいこのような行動に出るようになったのもこの頃からだ。

「だから、ここは」

 この頃には僕はもう真由子に勉強を教えてもらう立場ではなく、気まぐれだが勉強を教える側になっていた。
 学校という場所は好きではないが、勉強は嫌いじゃないし、遊びながらも昔から暇があれば教科書を眺める習慣のある僕は成績は常にトップクラスだ。

「も、もう一回説明してください!」
「……疲れた。続きは明日にしよう」
「お願いします! あとちょっとで答えまで見えそうなんです!!」

 唯一、真由子がこうなった時だけはすんなりと僕のコントロールがきかなくなる。なぜか勉強に対しての熱の入れ方は半端じゃなかった。

「もう眠いんだろ? さっきから目がうつろだし」
「大丈夫です。この、強力刺激の目薬をさせば……」

 真由子が手を伸ばした先の目薬を先に奪う。

「そんな状態で勉強しても身にならない。少しでもいいから眠った方が効率がいい」
「それはそうですけど……分かりました。じゃあ、少しだけ」

 そういうと突然テーブルの上に自分の腕を枕にして突っ伏した。
 そしてものの数秒でスヤスヤと穏やかな寝息をたてはじめる。

 やっぱり限界だったらしい。少しだけと言っていたがだいぶ深い眠りについているように見える。

 ここは僕の部屋だ。このまま眠るつもりだろうか。
 危機感のない奴だ。ここにいるのが僕だからよかったものの。

 真由子の肩から薄手の毛布をかけ、同じようにテーブルに突っ伏して、同じ高さで真由子の顔を見た。
 無防備な寝顔。勉強中にだけかけるという眼鏡がずれ、夏になって少し日焼けした肌には眼鏡のあとが赤くなってくっきりとついている。素朴で飾り気のない素顔。真夏にも関わらず室内で長袖をきているのはエアコンが苦手だかららしい。ひ弱そうな真由子らしい。

< 190 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop