相容れない二人の恋の行方は
 新谷に連れ出されてやってきたのは、彼の自宅から徒歩とバスを乗り継いで30分ほどのところにあるゲームセンターだった。休日の今日は多くの若者と家族連れで大混雑していて、ただでさえ騒がしい施設内が余計に煩く騒々しく感じる。耳が痛い……。

「なんで……こんなところに」
「久々にメダルのゲームがやりたくなったんだ」

 新谷はメダルの交換所へ行き預けていたメダルを受け取ると戻ってきて、目的のゲームで一人で遊びだした。
 私はただじっとその場に立ち尽くして早くこの時間が過ぎ去らないかと待つばかり。ゲームにも興味がないし、こんな騒がしい場所は大嫌いだけど、不良たちに囲まれる物騒な場所に連れられるよりはまだマシだと思えた。バイクもホンモノよりもゲームセンターのバイクの方がずっとマシ……。そういえば、出会ったころは頻繁に不良仲間の集まる場所に連れて行かれたけど、最近は行っていないな。
 新谷に目を向けるとメダルゲームに夢中になっている。
 本当に、私はいつもただただ振り回されるばかりで、この男(ひと)の目的も考えていることもさっぱり分からない。今だって、自宅の前には送迎用と思われる高級車が数台停まっていたのに、それは使わずに徒歩と公共機関を使って、やってきたのはまさかのゲームセンター……。セレブらしからぬ行動だ。

「真由子は遊ばないの?」
「まったく、興味がありません」
「そうやって、やってもみないのに最初から拒絶してばかりじゃ人生もったいないよ」
「……」

 言っていることはもっともだけど、対象がゲームだと思うと頷くことは出来なかった。

「ねぇ、あれは何? 前から思ってたんだけど」
「あれ……?」

 新谷が指を差す方へ目を向けると、ゲームセンターに隣接しているバッティングセンターだった。

「バッティングセンターです。飛んでくるボールをバッドでただ打つだけの……」
「へぇ、やってみよう。真由子教えて」
「へ? あ、ちょ、ちょっと!」

 新谷は遊んでいる途中のメダルを放置してバッティングセンターへと行ってしまった。私は、そんな彼の代わりにメダルを専用ケースに入れ集めてから彼を追った。

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