相容れない二人の恋の行方は
 使用人に渡されたタオルとバスローブを持って、バスルームへと向かう。家の中が広すぎて軽く迷子になりながら、三度目に開けた扉の向こうに、ようやくバスルームを発見。
 着替えや下着を持たされなかったところから、着替えは別の場所でするのだろう。タオルとバスローブくらい、常にバスルームに置いておけばいいのに。
 脱衣所も広く、洗面台や鏡はピカピカに磨かれていて、自宅の脱衣所に置いてあるようなバス、洗面グッズらしきものは一切置かれていない。おそらくタオルなども置いていないところを見ると、使うその都度、使用人が用意するのだろう。この家の中は自分の知る世界とはまるで別世界。一日目にしてホームシック。お家に帰りたい……。
 手に持たされたタオルとバスローブを洗面カウンターの上に置いて脱衣所を出ようとすると、扉が開く音と同時にもわっとした生暖かい空気を背中に感じる。私は何も考えずに振り返った。

「……はっ!!」
「なんだ、真由子か。なにしてんの?」

 白い湯気に包まれ全身から水を滴らせた状態で新谷がバスルームから出てきた。滴る水滴も私のことも気にする様子などまったくなく、ぴちゃぴちゃと足元に音を立てながらながらずんずんと前に進んできて「あぁ、タオルか」と涼しい顔をして言うと、たった今私が置いたばかりのタオルとバスローブを手に取り、私の目の前でバスローブを身にまとった。そしてタオルで頭を拭きながら私の前を通り過ぎて行く。

「ボク、部屋で着替えてるからあとから来いよ」

 そう言いながら脱衣所を出て行く新谷の背中を見つめ、彼の姿が見えなくなったところで脱力。その場に座り込んでしまった。
 い、今……! はだか……!?
 かぁっと一気に上がる熱を感じ、私は勢いよく立ち上がると脱衣所を飛び出した。

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