相容れない二人の恋の行方は
 帰りたい、帰りたい、帰りたい……!
 呪文のように心の中で繰り返し唱えながら走って向かう先はこの地獄からの出口(玄関口)……!

「真由子さ~ん? どこへ行くの?」

 ぞっとするほどの存在感を背後に感じ、恐る恐る振り返ると……

「一か月、住み込みでここに仕えると伺っているのだけど?」

 私の行く手をはばんだのは、新谷がメイド長と呼んでいる女性だった。昼に、全員を前に挨拶をした時が初対面だったけど、一目見てすぐに、この人が長だと分かるような女性だ。貫禄のある外見、威厳、そしてロボットのように無駄も隙もない動き。この人が、この可愛らしいメイド服を好んで着ていることにには若干の疑問が残るところだけど、他人の趣味に口出しはしていけない。

「これからあなたには千智様の自室にて一緒に食事をとってもらい、就寝するまでの間はお暇つぶしに付き合っていただいて、ベッドに入ってからもお眠りになるまでは付き添っていただきます。あなたが寝泊まりするお部屋は昼に案内した通り……」
「な……付き添!? そんなの聞いてな……!」
「千智様からのご命令です。一か月間、よろしくお願いしますね」
「……は、はい……」

 有無も言わさぬ威圧感に圧倒され、しぶしぶ頷いた。
 本当に私、ここで一か月生活していけるのだろうか……。

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