相容れない二人の恋の行方は

12 唯一の救いは

 すっきりと片付けられた外国製のシステムキッチンには様々な見たことのない設備や最新家電が備わっていて安易に触れることが出来ない。
 慣れない場所でかなりの時間を費やし、やっとの思いでコーヒー一杯を入れると新谷へ出した。
 私はコーヒーを載せてきたトレイをぎゅっと胸に抱いてコーヒーに口をつける新谷に疑問をぶつけた。

「ここには一人で住んでるんですか……?」
「昨日までは二人、使用人が出入りしていたけどね」
「その人たちは……?」
「彼女たちにはここよりももっと割のいい仕事をちゃんと手配したよ」
「そ、それって……! わざわざ辞めさせたってことですか?」
「割のいい仕事を紹介して、本人たちが自ら望んだまで。勘違いするなよ、強要はしていない」
「そこまでする理由っていったい……!? だいたい、今日は何してるんですか? 仕事は!?」
「学院理事……か。あまり気乗りしないんだよな……」
「はい!?」
「ははっ、嘘嘘。向こうにしばらく滞在していて昨日帰国してきたばかりなんだ。今日は久々の休み」

 呆気に取られる私を無視して、新谷はマイペースにコーヒーを飲む。そしてカップをテーブルの上のソーサーに置くとソファにもたれがかった。

「ボクも、一つ真由子に質問してもいい?」
「なんですか?」
「数年会わないうちにとても綺麗になったけど、なんで?」
「わ、私ですか? 知りませんよ、そんなの……」

 視線を感じながらもじっと俯いていると電話の音が鳴り響いた。新谷はダイニングテーブルの上に置いたスマートフォンを手に取ると電話に出た。

「……あぁ、久しぶり。うん、うん……」

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