相容れない二人の恋の行方は
リビングのドアを開けると、テレビも何もついていない静かな部屋でソファに座る新谷の後ろ姿を見つける。
私は静かな部屋だからこそ届くくらいの小さな声で言った。
「さっきは、ありがとうございました」
返事はなかったけど、伝えたいことは伝えられて「失礼します」と言い残し立ち去ろうとドアノブに手をかけたところで新谷が口を開いた。
「大丈夫?」
その一言だけ。大丈夫、って……もしかして、心配してくれている? いや、まさか。
言葉の真意が分からず黙っていると「中入れよ」という言葉にドアノブに置いた手を離し、部屋の中へと足をふみ入れた。
そして新谷の顔が見える場所まで行くと立ち止まり、目は合わせず視線は下へと向けたまま言った。
「さっきの話聞いてたんですよね。別に、騙されたわけでもなんでもないので。相手の中身も何も見ずにうわべだけに惹かれて……恋をしていると思い込んで。悪いのは全部自分なんです」
それまでずっと異性に興味関心がなく、むしろ苦手だった私は新谷以外とは交流も話をすることもほとんどなかった。それが大学進学と同時にたくさんの男性に囲まれて、しかもみんな優しくて、男性にいじめられた経験しかなかった私にとっては新鮮で驚きの連続だった。
生まれてはじめて自分に好意を持ってくれる男性も現れるようになった。でも異性に対する苦手意識は次第に薄れてはきていたけど、なかなかぬぐえなくて、恋愛に淡い憧れはあったけどずっと一歩踏み出せずにいた。
それでもやがて元彼のよく笑い温かみのある雰囲気がいいなと思いはじめるとこれが恋なのだと思い込んで、彼のために綺麗になりたいと周りの友達に協力してもらって外見だけは少しはマシに変われたけど、私の気持ちが人伝いに伝わって相手が振り向いてくれても、臆病で自信が持てない自分の中身はそのままだった。だから相手が本当に自分のことが好きなんだろうかって疑問に思って常に不安だったし、そんな気持ちのまま自分のすべてを捧げることなどできず拒んでばかりいたらそれが原因で終わってしまったのだ。別れたすぐ翌日に元彼が別の女性と親密な様子で一緒に歩いているのを見たけど、今でも彼を恨む気持ちはない。傷ついたけど、お互い様、自業自得だと思ってやり過ごした。
彼の本心を見抜けなかったのは自分だし、会うたびに無理やり迫られる恐怖心もあったけど、触れられるたびに嫌悪感を覚えていた彼のことを、私も心から好きなわけではなかったのだと思う。
私は静かな部屋だからこそ届くくらいの小さな声で言った。
「さっきは、ありがとうございました」
返事はなかったけど、伝えたいことは伝えられて「失礼します」と言い残し立ち去ろうとドアノブに手をかけたところで新谷が口を開いた。
「大丈夫?」
その一言だけ。大丈夫、って……もしかして、心配してくれている? いや、まさか。
言葉の真意が分からず黙っていると「中入れよ」という言葉にドアノブに置いた手を離し、部屋の中へと足をふみ入れた。
そして新谷の顔が見える場所まで行くと立ち止まり、目は合わせず視線は下へと向けたまま言った。
「さっきの話聞いてたんですよね。別に、騙されたわけでもなんでもないので。相手の中身も何も見ずにうわべだけに惹かれて……恋をしていると思い込んで。悪いのは全部自分なんです」
それまでずっと異性に興味関心がなく、むしろ苦手だった私は新谷以外とは交流も話をすることもほとんどなかった。それが大学進学と同時にたくさんの男性に囲まれて、しかもみんな優しくて、男性にいじめられた経験しかなかった私にとっては新鮮で驚きの連続だった。
生まれてはじめて自分に好意を持ってくれる男性も現れるようになった。でも異性に対する苦手意識は次第に薄れてはきていたけど、なかなかぬぐえなくて、恋愛に淡い憧れはあったけどずっと一歩踏み出せずにいた。
それでもやがて元彼のよく笑い温かみのある雰囲気がいいなと思いはじめるとこれが恋なのだと思い込んで、彼のために綺麗になりたいと周りの友達に協力してもらって外見だけは少しはマシに変われたけど、私の気持ちが人伝いに伝わって相手が振り向いてくれても、臆病で自信が持てない自分の中身はそのままだった。だから相手が本当に自分のことが好きなんだろうかって疑問に思って常に不安だったし、そんな気持ちのまま自分のすべてを捧げることなどできず拒んでばかりいたらそれが原因で終わってしまったのだ。別れたすぐ翌日に元彼が別の女性と親密な様子で一緒に歩いているのを見たけど、今でも彼を恨む気持ちはない。傷ついたけど、お互い様、自業自得だと思ってやり過ごした。
彼の本心を見抜けなかったのは自分だし、会うたびに無理やり迫られる恐怖心もあったけど、触れられるたびに嫌悪感を覚えていた彼のことを、私も心から好きなわけではなかったのだと思う。