相容れない二人の恋の行方は
「誰に聞いたんだよ、そんなこと」
「誰って、社長に……」
「あぁ、父か。ほとんど一緒に生活していないから知らないだけだよ。ま、家にはそう思われてもおかしくないくらいの人数の使用人がいて、身の回りのことは全部やってくれるからね。たぶん父自身がお湯も沸かせないんじゃない?」
「はぁ……」
「なに? じっと見て」
「ご、ごめんなさい……」

 実の父親が、そんなことも知らないの……?
 子供の頃から学院内では孤立して、家の中でも家族はほとんど留守にしていてあんな広いお屋敷に一人で使用人と暮らしていたんだ。兄弟もいないと以前言っていたし。実際に、下宿していた夏休みの間一度たりとも新谷の家族の姿を見ることはなかった。

「真由子?」
「……へ? はっ、なんでもないです!」

 危ない。今私、新谷に同情してた……?
 新谷なんか可哀そうなんかじゃないよ、私の方がもっと可哀そうなんだから!

「でーきた。ほら、座れよ」
「え……?」
「早く!」
「は、はい!」

 慌てて六人掛けの大きなダイニングテーブルの新谷の向かいに座る。目の前には美味しそうな料理。……あぁ、お腹が空いてきた。二人分の用意がしてあるということは、私も食べて良いってことだよね? 恐る恐る手を合わせ「いただきます」と言ってフォークを手に取ってオムレツを口に運んだ。

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