Sunshine Door
「ねぇ 飲み行こうよ」

「別に良いけど、お前お酒飲めないじゃん。またフラれたの?」



「うん 当たり」

「サヤカがフラれたの今年で何度目?」


「うん?覚えてないくらい。だから飲みに付き合って慰めてよ。」

「分かったよ。」


「じゃあいつもの時間、いつもの場所で」

「わかった。いつもの場所で。」



簡単でありながら、まるで慣れたような電話のやり取りを済ませ、私は早々と仕事を終わらせることに意識を集中させた。


仕事は短調なもので、マネキンのような笑顔を振り撒いて、お客の質問に回答するだけでいい。


私はそんな退屈な毎日に嫌気が差していた。


仕事が終わると一旦自宅へ戻り、ユウトと会うために普段より少しだけ時間をかけて準備をする。


ユウトと会う時はDining Bar、「ライムライト」と決まっている。


それは約束事でもなんでもなく、大学時代から続けていた習慣として、いつの間にかそれが当たり前になっただけのこと。


その「どうでも良いような当たり前」の空間の中でしかユウトを独占することは出来ない。


ライムライトへはいつも私が少しだけ先に着き、ユウトの到着を待つ。


私は体質のせいなのか身体がアルコールをほとんど受け付けない。


ユウトも決してお酒が得意と言うわけではないのだが、私の誘いを一度でも断ったことがない。


ちょっと遅い約束の23時。


重いライムライトの扉の開く音で、背中越しでもユウトが到着したのだとなんとなくだが私にはわかる。
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