青い嘘とブルーなKISS
「なんとなく」出会った二人が、溢れる人間をかき分けるように、「なんとなく」あてもなく歩き始める姿はまわりの人達から見たら「異質な存在」だったのかもしれない。


特に笑顔が多いわけでも楽しく会話があるわけでもなく、それでいて不満であったわけでもない今日出会った「なんとなく」の二人。



どこに向かうわけでもなく1歩ずつ歩いているだけで、お互いの距離が縮まることも遠のくこともなかった。



別に言葉がなくても、目的がなく歩くことも、私自身に不満はなかった。


ただ、歩きながらでも彼の整った横顔が少しだけ視界に入るたびに、もう少しだけ彼との距離が縮まればと言う思いは、その時はほんの少しだけ感じていたのかもしれない。



陽が完全に落ちたころ、そんな私の気持ちを知ってか知らずか、小雨が降り出し、二人の肩を濡らし始めた。



ずっと無言だった二人の関係を少しだけ優しく切り裂くかのようにセナは私にギリギリ聞こえる程度で言葉を投げ掛けてきた。




「ちょっと傘買ってくるから屋根のあるここで待ってて。」



一瞬返答に困りながらも私はなんとなく自然に振る舞おうと言葉を返していた。



「うん。傘は2本じゃなくて1本ね。」

「分かった。1本ね。」



二人で出会ったきっかけをセナが作ってくれたように、私も不自然かもしれないけれど「きっかけ」を作らなくては、と言う焦りから出た言葉だったのかもしれない。
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