罪線〜an imitation〜
「思い出せないな……教えてくれよ」


そう言って、俺が惚けた顔をすると、平岡は少しムッとした表情で言う。


「ひどいなぁ。僕の願い事は忘れて、自分の希望ばかり口にするのはズルイよ?ケンジ君」


自分は俺に無理難題、自らが言う程のわがままを抜かすくせに。

笑える。


「解った解った。悪いね。……で?その願い事って?」


「だから、二日前に言っただろ?……アレ、殺してよ」


「……」


あれは、冗談じゃなかったのか……。

ただのおふざけ、センスの悪い冗談だと思っていたが、そうじゃないらしい。


「ね?殺してよ」


平岡は無邪気に笑いながら、ポケットに忍ばせていたバタフライナイフを渡す。


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