奇跡の花『miraculous flower』―正直僕は強くない。けど、僕達は強い。

中編

そして、次の日にいつも通り朝7時に起床し、歯を磨いて学校に行く用事があったので、制服に着替えて食堂に行った。いつもなら、友達(主に剣翔だが)と朝食をとるが、今日は珍しく一人で食べていた。するとそこに1人の先輩が話しかけてきた。
「隣良いかな?」
「はい、いいですよ」ととっさに挨拶すると、隣に話したことはあまりないが、よく知っている人だと気づくとすぐさま、挨拶しなおした。
「日向(ひなた)先輩。おはようございます」
隣に座っていたのは、男子剣道部2年のエースと呼び声高い日向 朝(あさ)胤(かず)先輩である。身長も180㎝近くあり、容姿端麗で、成績優秀で、学力もこの学校は2年になると文理で別れて、そのうえ内部では高1の時に2クラス100名であった特進クラスがさらに文系だけで1個、理系だけで2個新設される中、高1から常に特進クラスにい続けて、おまけに理系でトップクラスに位置しており、まさに完璧超人である。加えて、その周りを虜にするような笑顔と誰とでも分け隔てなく接する性格のおかげで、本人は知っているか否か定かではないが、微笑みの王子様と言われている。考え方も基本的に人を信じる考え方をしていらっしゃる方だった。
「ああ、おはよう」
「今日は珍しく先輩もおひとりですか?」
「まぁね。友達みんな昨日から帰省しちゃったからさ」
「そういえば、帰省できるタイミングって、昨日か今日ぐらいしかないですもんね」
「確かに、明後日から練習再開で、明々後日からは桜光との交流試合だからな。今年も団体戦で勝つよ」
「はい、期待しています」
「期待していますじゃなくて、勝ちに貢献しますだろ。頼むぜ」
「でも、僕は周りと比べて全然強くないですから」
「そんなことないさ。確かに入学当初はあまり上手じゃなかったかもしれないけど、今は一年生の中でも真ん中ちょっと上にはいると僕は思っているよ。それとも単に僕が勘違いしているだけかい?」
「そんなことはないと信じたいです」
「まぁ、がんばってくれよ。交流戦の勝敗決めは学年ごとのから15人選んで勝ち抜きで戦わせるのと、全学年から選ばれた5人の団体戦に分かれているんだし、たぶん15人なら選ばれるんじゃないかな?当日になって、監督から発表されるまではわかんないけどさぁ。それに、最後の団体戦の方がポイントは倍と言っても、先に一勝でもあげとかないと最後の団体戦が消化試合になっちゃうしね」
「はい、試合に出場できたら、一人でも多くの相手を倒して、勝利に貢献します」
「その意気だ。ところで、今日も休みなのに制服着ているけど学校いくの?」
「はい、ちょっと学校でやることがありまして」
「そうか。まぁ、三年生もあともう少しで引退だし、最後に交流戦で花持たせてあげたいし、僕等も学年1個上にあがるから、部活も気合いれていかなきゃいけないなぁ」
「そうですね。ところで、日向先輩は世界大会に選抜候補にやっぱり選ばれたんですか?」
「お、気になるかい?」
「はい、ものすごく気になります。」
「じゃあ、新覇は僕が選ばれていると思うかい?」
「ええ、もちろんです。男子剣道部2年エースで、去年の1年学年対抗戦で学年ナンバーワンなんですから、当然選ばれていると思います」
「なら期待に応えられるような結果になるといいね」
「どういう意味ですか?」
「実はまだ通達が来てないんだよねぇ。例年ならこの時期に来るはずなんだけど」
「でも、先輩なら絶対いけますよ」
「そうかい。ありがとう。ところで、最近あいつは元気にしているかい?」
「元気も何もつい一昨日も一緒に部活していたじゃないですか?」
「まぁ、そうだけど。あいつ業務連絡以外は事故にあって以来あんまり口きいてくれないんだよね。やっぱり、兄として弟は心配なわけよ」
「僕にも兄妹がいるので、気持ちはわかりますよ。元気にしていますよ。多分ですけど。ただ、僕は日向先輩が思っているほど、蒼地(そうじ)に好かれてないですよ」
「え、そうかな。割と仲良いように見えるけどなぁ」
「そういうことは1年の福本に聞いた方がたぶん的確な答えが得られますよ」
「そうかい。じゃあ、これからはなるべくそうするよ。じゃあ、そろそろいくか」
お互いに食器を軽く水で濯いで、返却口に返して、『ごちそうさまでした。ありがとうございました』といって、食堂からでた後に、各々の目的地へ向かうために、別れていった。
僕はそのまま学校の図書館にいって、午前中はゴールデンウィークにでた大量の課題をするために、図書館で一人こもって、勉強した。午後になると、売店で昼食用におにぎりを2つ買って、昨日干しておいた洗濯物を取り込むために部屋に帰って、そこで昼食をネットでアニメを見ながら済ませた。その後、洗濯物を取り込んで両親がゴールデンウィーク中にこちらに東京観光のついでに様子を見に行くという連絡に返信してから、約束していた用事があったので、部屋で干したての剣道着を着てそのまま剣道場に向かった。
 
約束の3分前には道場についたつもりが、すでにそこには一人の女の子が正坐をして待っていた。正坐をしている女の子は髪が白を基調として毛先に行くたびにピンク色が濃くなっていく髪を持った人で、その凛と背筋の伸びた正坐の姿勢から、彼女の育ちの良さが感じられる。目を瞑ってはいるが、顔は整っていて、肌も思春期なのにあれてなく、まつ毛も長く、背も新覇と同じくらいで女子にしては高い方である(実際は新覇より7㎜ほど高いのだが、無意識のうちに新覇のプライドがに彼女は自分と同じくらいと思い込ませていた)。名前は梅(うめ)春(はる) 彩(さい)華(か)といい世間一般で言われる美少女と呼ばれる人間だ。おまけに実力と頭脳が共に1000人近くいるこの学校で学年トップ10位には入ると言われている。
「こんにちは。梅春さん。早いね」、
「新覇、君が遅いだけだ。約束の5分前集合は当たり前のことだろう。それに、頼んでおいて、私より遅れるとはいったいどういう了見だ」
「はい、おっしゃる通りです。すみませんでした」
「まぁ、一昨日みたいに遊びに行くときはどうやら早めに行動しているから、興味のあることには早めの行動ができるのだろう。つまり、頼んできたからわざわざ休日の一部を返上してやってあげているこの特訓は興味がなく、本心では望んでやっていないということだな」
「いや、あの、そういうわけじゃないよ。いつもこんな下手くそな奴の練習に付き合ってもらっていて、本当に感謝しています」
「口では何とでも言える。態度で示して見せろ。休日に個人で借りられる時間は限られているから時間がないんだ。さっさとウォーミングアップを済ませろ」
「はい、さっさと準備します」
7分ほどで柔軟を済ませて、10分ほどで軽いウォーミングアップを済ませた。
「ふぅ~。よし、準備できた。始めよう」
「いいだろう。今日も叩きのめしてやる」
「はは、目がすわっているよ。お手柔らかに」
通常なら、防具をつけるのだが、彼ら魁現士候補生はまだまだ成長過程とはいえ、すでに入学前からある程度の植物を操る力を身に着けており、自身の面や小手などの防具を自身の能力から精製できるので、剣道をやっていても、使用して汗の染み付いた用具を毎回洗って干せることから、剣道が疎遠される原因のあの臭いを解消してくれるのである。おまけに、今までの防具と違って、個々の能力の出来不出来もかかわってくるが、基本的にここの体系にフィットした耐衝撃吸収の優れた防具が出来上がるので、剣道が疎遠される原因の一つのあの痛さがある程度解消されるのである。そのぶん、より実戦に近い訓練ができる上に、相手がちゃんと魁現士としての能力を使えれば、手加減なしの全力で打ち込むことができる。
お互いに近づき、帯刀し、構えて竹刀の剣先を合わせる。その合わせたのを合図に野試合が始まり、静寂だった剣道所に怒号が響きわたる。
そして、たとえしないが相手に決まって技ありとなっても、再び台頭しなおして、幾度となく試合が行われた。そんな試合が30分ほど行われた。
「ふう~。ちょっと休憩しよう。さすがにちょっと疲れた」
「ふん、男のくせに女子の私より先に根をあげるとはいったいどういう了見だ」
「いや、体力的にはまだ大丈夫なんだけど、一昨日道端で倒れたらしく、ちょっと無理をするのは控えるように言われているんだ」
「それなら、そうと先に特訓を始める前に、ちゃんと私に言っておくべきだぞ」
「だって、梅春さんなんだかんだいっても優しいから、きっと中止か手を抜くんじゃないかって思っちゃってさぁ」
「それについては安心しろ。私は勝負ごとでは決して手を抜くことはない。たとえ相手が子供や老人であっても、変わることはない。まして、君ならいつも以上に何度でも叩き込もう」
「あはははは、それは光栄なことで」
「それより、体には異常はなかったのか?」
「うん、それは鷹里先生に脳以外は見てもらったし、脳は調べてないけど、あの人が問題なって言うなら、問題ないと思うよ。たぶん、最近忙しかったから、疲れがたまっちゃって、そうなっちゃったのかな?」
「そうか、大事に至らなかったなら、それでいいんだ。稽古相手がいなくなるとつまらないからな。ただ、一つ文句をいいたい」
「なにについて?」
「君が過労だと笑わせるな。確かにここ数か月の間君が努力してきたことは少しは認めよう。だがな、毎日しっかり7時間睡眠をとっているのに、過労などという大それた言葉を使っているようなら、認識を改めないといけないな」
「でも、成長期で7時間睡眠って結構きついんだぜ」
「言い訳するのか?」
「すみません。過労は言いすぎでした」
「私に謝るんじゃない。全国の残業で頑張っている社会人の方に謝りなさい」
「社会人の方本当にすみませんでした」
「うむ、よろしい」
そんな他愛のない雑談をしながら水分補給をしていたら、剣道場の扉誰かの手によって開けられた。
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